理究の哲学(エンジン)

第一章 幸福ノ学

第四項 「幸福論」→「ウェルビーイング理論」

― 心理学が変わる ―

さて、伝統的な心理学は、「人間の心の苦しみを和らげること」「人間の不適応行動を解決すること」「悩みからの開放を手助けすること」などを主目標としてきました。つまり「病理のための学問」としての役割です。具体的には、自殺、抑うつ、パニック症候、登校拒否、学習性無力感、などの防止や治療です。
21世紀になり「心理学」にも変化が起こってきました。圧倒的に多数の普通の人たちが、現状よりさらに豊かに、さらに満足度の高い、さらに幸福感を持続できる、そんな「心理学研究」です。アメリカ心理学会の会長も勤めたマーティン・セリグマンが中心となり「ポジティブ心理学学会が設立され、注目され始めました。

「何が人生を生きるに値するものかを探求する」
「生きるに値する人生を可能にする状態を築き上げていく」
「持続可能な本物の幸福とは何かを測定可能にする」
これらを問う新しい概念を提示しました。

今までの「幸福論」から「ウェルビーイング(よりよく生きる)理論」とし、測定可能な要素を取り入れ、「幸福論」の出口のない哲学の議論からデータに基づいた心理学のフィールドに大胆にも持ち込んでいます。
その中の一人、バーバラ・フレドリクソン博士は、『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』(2010年 原題:Positivity)を著し、ポジティブさの効用を科学し「幸福になる方法」を提唱しました。イラストで示したように、彼女の挙げている代表的なポジティブ感情は、愉快(Amusement)、畏敬(Awe)、感謝(Gratitude)、興味(Interest)、鼓舞される感情(Inspiration)、希望(Hope)、喜び(Joy)、誇り(Pride)、安らぎ(Serenity)、そしてすべてを包み込む感情として、愛(Love)を考えました。
ポジティビティとは、自己肯定的な心の状態を示しています。ネガティビティはその反対の状態(怒り、嫌悪、不安、軽蔑、悲嘆など)です。

【イラスト1】LOVEに包まれたポジティブ感情

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