理究の哲学(エンジン)

第一章 幸福ノ学

第七項 「幸せ」・・・の秘密

一生大好きだと思っていた恋人が嫌いになった。
この会社に入ったら、人生バラ色だと思ったのに、そうでもなかった。
やりたいことがいっぱいあったはずなのに、いざ退職してみると暇だった。
こんな経験は誰にでもあるはずだ。
どうして私たち人間は、いつも間違った「未来の幸せ」を想像してしまうのだろうか。
その秘密は、私たちのなかにある。

― 『幸せは、ちょっと先にある』ダニエル・ギルバート著 ―


冒頭で紹介したダニエル・ギルバート氏は、未来の感情も予測する心理を研究しています。「自然発生的幸福とは、欲しがったものが手に入ること。人工的幸福とは、欲するものが手に入らなかったときに自ら作り出すこと」と、2種類の幸福を説明しています。
え?希望したものがゲットできなかったときは、幸福感ではなく失望感や不幸感が強くなるのでは?と普通は思います。
例えば、第1志望の大学に合格できず、第2志望に合格ならば、幸福度はかなり落ちます。つまり、期待外れだった場合、幸福度は、
自然発生的幸福 > 人工的幸福
のように捉える人が多いだろうと考えます。
ところが、私たちの脳には「心理学免疫システム」が働き、たとえ事が予想通りにいかなくても、心から幸せを感じさせてくれることがあるのだ、とギルバート氏は様々な実験を通じ、証明しています。
自然発生的幸福 = 人工的幸福
が正しいと感じますよね。
この「心理学免疫システム」は、自分が属する世界を、より良いものに感じられるよう、脳が勝手に世界の見方を変えてくれるのです。
上記の大学の例でいくと、第2志望の○○大学に入学することで、この友達に逢えた、この専門の先生に師事できた、この勉強会はこの大学だけだ、この大学は、こんな才能のある人材を輩出しているんだ、この大学は他にない特徴がある、海も近し、山もある環境には抜群だ、東京にも近くて便利だ、この大学が合っていたんだ、というような後付の理由が、無意識に働くわけです。
どうでしょうか?あなたにも似た経験はありませんか?
第1希望でなく、第2希望でも充分満足していることはありませんか?

上記の大学の例は、私の体験です。
横浜に来て、本当に良かった、と心の底から感謝しています。素晴らしい仲間と出会えたこと、一緒に働くことができたこと、横浜に来なければ「吉村屋ラーメン」を知ることもない、ラッキーそのもの。第1志望ではないにもかかわらず・・・。
ギルバートは、自然発生的幸福 = 人工的幸福なると論じていますが、私の場合はむしろ、自然発生的幸福 < 人工的幸福のようにさえ感じています。
人間の脳はそのようにできている、騙され易く、また、自分に都合のいいように解釈するのが脳、事実解釈を勝手に作り出していくのです。
主観的な記憶は当てにならないことは、あなたも経験があるでしょう。
「幸せ」感は”創造物”なのです。

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