理究の哲学(エンジン)

第六章 保育・幼児教育の考察②③

第一項 幼児の能力分析 編

この章では、2012年~2014年まで神奈川新聞教育コラムに掲載した中から「能力分析」に絞り、9本を抽出し、一部修正、加筆をしました。
コラムは文字数に制限があるために、文体は前章まで異なります。


1【幼少期教育の必要性】(2012.03.26 掲載)

春は、格別な趣を漂わす。色とりどりの草花は、鮮やかだ。黄色のアブラナやタンポポやナズナ、赤紫のカラスノエンドウやホトケノザ、青紫のオオイヌノフグリ。小さな野草たちが逞しく花を咲かせる。「命の芽生え」を春が教えてくれる。自然に感謝したい。保育園や幼稚園でも新しい先生や友達との出会いがあるだろう。良い新学期を迎えて欲しい。
さて、『幼少期教育(乳児期+幼児期)の必要性』について触れたい。
「三つ子の魂百まで」という言葉がある。昔は数え年なので、乳児期のことを示す。もって生まれた気質や性格は一生変わらない、という意味だが、他に「三つ子の根性八十まで」という言葉もある。“ほんまかいなぁ”ツッコミが聞こえそうだが、魂や根性なので、ここはスルーしよう。これを自己流・拡大解釈し、幼少期の教育が一生を決めるなどの誇大表現には閉口する。騙されぬよう気を付けたい。とはいえ、乳児期や幼児期の環境が、一生を通じて人間形成の中で大きな影響を与えることは「オオカミに育てられたカマラとアマラ」や「アヴェロンの野生児」事例などで証明済だ。
さらに、幼少期教育の必要性の科学的な根拠としては、脳の発達に関する研究がある。一例が図にある「スキャモンの発育発達曲線」。これは成長発育を20歳の状態を100%として、各体組織の発育の特徴を4つ(①リンパ系型 ②神経系型(脳)③一般臓器型④生殖器型)にわけてグラフ化している。
たとえば、生殖器は必要になってくると(15歳~18歳)大きく成長する。脳の成長もこれ同じ。人間の脳が幼少期に成長発展するのは「必要性」があるからだ、という考え方。ちなみに、人間の脳の重さは、誕生時に約350~400g。それが、成人になると1300~1400g。つまり、約3~4倍になる。
図の②神経系型(脳)の曲線を見て欲しい。なんと5、6歳で80%~90%の脳ができる。え!?と驚かれる方も多いだろう。ただし、ここで、注意しなければならないのは、それは、物理的な量(脳の重さや頭囲)であって、ニューロンの数や、能力の質といった中身のことを表していない。とはいえ、幼少期にハード機能が大方整うわけだから、ソフト機能にも影響するだろうと考えるのが自然だ。つまり“幼児教育”は脳の発達過程からみても不可欠ではないか、となる。では、どのように考えていくのべきかは、次回に続く。

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