理究の哲学(エンジン)

第一章 幸福ノ学

第四項 「幸福論」→「ウェルビーイング理論」

― 「3:1」の黄金比率 ―

前に「メタ認知能力」について触れましたが、日常生活では、「自分の感情を俯瞰する」ことを、いちいちやりません。大変ですし、やる必要がありませんから。通常、ポジティビティ感情(ポジ感)とネガティビティ感情(ネガ感)の割合は正確にわかるはずもありません。ポジティブ心理学者達は、それを研究しました。

ではここで、大雑把に今日一日、自分の感情はどうだったか、簡単な作業をしてみましょう。(少し時間が必要です。急ぎの人はこの作業は空いた時間に)
やり方は、一日の行動やエピソードを振り返って、ポジティビティ感情(ポジ感)のときは○印、ネガティビティ感情(ネガ感)のときは×印をつけてみるのです。
(例)
・朝、目覚めたとき
・朝食の前後
・メールをチェックしているとき
・家族とのやり取りのとき
・出勤するとき
・午前の勤務のとき
・ミーティング中
・昼食のとき
・雑談しているとき
・午後の勤務
・休憩中
・片付け
・夕方の時間
・帰宅後の自分の時間
・夕食中の前
・フリータイム、・・・・・・

やってみると意外に面白いものです。
自分自身の行動を振り返っても、感情の状態をチェックすることはなかなかないですよね。日記を毎日つけている人でも、あまりしないでしょう。
「今日もいろいろあったけど、あなたの感情状態は?」

心理学者たちは調査や実験など、きめ細やかな手続きで研究し、データ集積・解析、分析をしています。
バーバラ・フレドリクソン博士らの研究によると、普通の人は、ポジ感情対ネガ感情は2:1程度だそうです。つまり、ポジ感情の方が多いわけです。よく考えてみると理解できます。私たちは日々の生活の中で、たとえ不愉快なことがあっても、それを一日中引きずってはいられません。気分の悪いことがあっても、自己修正したくなる、そして回復させる、その働きが人間の脳にはあるようです。
彼女の説で面白いのは、ネガ感情を排除していないという点です。これもわかります。無理していいことはありません。自分自身を誤魔化したら、かえってネガ感情が暴発しそうですからね。彼女はネガ感情をできるだけ減らして、ポジ感情を増やそうという提案をしています。もっとも、ネガ感情をゼロにするなど、私たち普通人には、土台無理です。日々、些細な事柄に感情は反応しています。たとえば、

傘を忘れて雨に降られる・・・”あ~あ、天気チェックしておけば”(後悔)
満員電車の中で汗臭い人と密着状態・・・”おい、勘弁してよ”(不愉快)
部下の企画プレゼンが期待はずれ・・・”なにやってんだよ”(落胆)
デートの約束だったのにキャンセルされた・・・”どういうつもり!”(怒り)

豊かな人生を歩みたければ、ポジティビティ感情(ポジ感)をネガティビティ感情(ネガ感)の3倍感じるとよい、というものです。日々の生活の中での感情の量・動きに注目したのです。
この「3:1」の感情を黄金比と名づけました。なかなかインパクトがあるネーミングです。
さて、あなたの感情の状態はどうでしょうか?

今日のあなたのポジ感情とネガ感情の比は、どの程度でしょうか?
大なり小なり、いろいろなネガ感情に振り回されますが、なぜかすぐ忘れることが多い気がします。

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