理究の哲学(エンジン)

第一章 幸福ノ学

第六項 楽観脳(サニーブレイン)と悲観脳(レイニーブレイン)

― 「前向きな幻想」 ―

イギリスの心理学者スチュアート・サザーランドは、著書『不合理』の中で、興味深い調査報告をしています。それは、調査に参加したドライバーの95%が「自分は平均よりも運転が上手い」と回答したというものです。
多くの人間は、自分は平均よりも運転が上手く、平均よりも生涯賃金を稼ぎ、平均よりも長生きし、平均よりも幸福に暮らし、平均よりも素晴らしい結婚生活をし、と思い込みをするのです。多くの人が平均より上だと感じているんです。これって、数学的にはありえない面白い現象です。
著者はそれを「前向きな幻想」(オプティムズ・バイアス:自分によいことが起きる可能性を人は過大に見込む現象)と呼んでいます。
「前向きな幻想」(オプティムズ・バイアス)が不合理だからといって否定しているのではありません。人間の脳は、何もしなければ自然に楽観的な思考をする生き物だということです。朝から晩まで悲観脳に占有されていたのでは肩が凝ります。胃潰瘍になるかもしれません。
「前向きな幻想」(オプティムズ・バイアス)があればこそ、私たち男どもは、”女性を口説こう”と無謀に近い行動を起こすのでしょう。女性に振られるぐらいならいいのですが、危険を直視できない「前向きな幻想」、例えば、貯金していなくても何とかなる、少し飲酒したぐらいの運転は大丈夫だ、などは幻想を通り越し幻滅、そして人生の破滅に繋がります。

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