理究の哲学(エンジン)

第四章 未来創造ノ学

第三項 パレットイズムを考える

「日本一の保育園にしたい」と、大岡山保育園、長津田保育園の開園式で挨拶しました。大風呂敷を広げたつもりはありません。それは、売上げや園児数など規模のことを指しているのではありません。(中略)
“入園希望者が日本一”を目指したい。これは私個人の希望。(中略)
「いずれ待機児童数問題が解決したときにお客様から選択されないような保育園は淘汰されるであろう」という危機意識があるからです。

― 30期 理究 巻頭言 ―


『幼児教育の経済学』(ジェームズ・J・ヘックマン:東洋経済201507)は、 幼児期における教育政策が、その国にとって重要かつ効率的である。そのことを実証的データ分析に基づいた証拠(エビデンス)を示すことで、国の教育行政に一石を投じようとする注目すべき著作です。今後、幼児教育関連の話題には頻繁に引用される著作になるでしょう。
その著作での問いは、
・なぜ幼少期に積極的に教育すべきなのか?
・幼少期に適切な働きかけがないとどうなるのか?
・早い時期からの教育で、人生がどう変わるのか?

ノーベル経済学賞を受賞した経済学的な権威が、「子どもの人生を豊かにし、効率性と公平性を同時に達成できる教育は、就学前教育にある」と、主張しました。私たち当事者にとっては当たり前の感覚ですが、一般的な常識になる動力源になるでしょう。
ヘックマンは、恵まれない環境に生まれた幼児に対する社会政策の結果を分析し、その教訓として、
1. 人生で成功するかどうかは、認知的スキルだけでは決まらない。
2. 人生で成功するかどうかは、非認知的スキル(健康、根気強さ、注意深さ、意欲、自信など)―社会性や感情は欠かせない。
3. 認知的スキルも非認知的スキルも幼児期に発達し、その発達は家庭環境に左右される
4. 幼少期教育は、公共政策によって、問題を改善することが可能

この教訓に異論を唱える人は少ないかも知れません。
ただ、では具体的に教育行政は何をしたら良いのか、各家庭ではどうしたらよいのか、といった議論になると、あまりにも多くの要因がありすぎ、先に進めないというのが現状です。
驚くべきことは、この本の中で、教育者、心理学者、社会学者、政治学者らが、ジェームズ・J・ヘックマンの考察や提言を批判的に検証していることも紹介されていることです。相互にエビデンス(証拠)を出し合いながら、限られた財源をどのように使うべきかを俎上にあげるのは、この少子高齢化社会を考える上で必要なことです。

当社は、1995年から保育園事業に参画しました。
経緯は、「理究の精神ver1.0 p155~」にあるので、参照して下さい。
保育理念は、“ひとりひとりに生きる力を!”をスローガンに掲げました。
この世に偶然誕生した「命」。その命に魂を吹き込み、保護者さんと二人三脚で健やかな成長を願ってのスローガンです。

そのスローガンに込めた理念は、
1. 一人ひとりを「大きな家族」の一員として認め、また、役割を認識させ、愛情を持って育てます。「大きな家族」とは、「つながり」を意味します。
2. 「つながり」は、弱者を慈しみ、仲間を尊重しあう基本的情緒を育みます。
3. 一人ひとりの子どもを見極め、発達段階に応じ、「感性・知性・体力を培う」三位一体のバランス保育・教育をします。
4. 小学校入学をゴールとして定め、一人ひとりの認知的能力を最大限に伸ばす保育・教育をします。
5. 一人ひとりが意欲的な生命力を発揮できるよう「自律と自立と自尊」の精神を大切に育てます。新しいことにチャレンジすること、できることを自分でやること、我慢をする・自制をすることなど非認知機能能力を育むことが、一人ひとりの潜在能力を向上に直結する要因であることを理解しながら保育・教育を実践していきます。

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