神奈川新聞 2023年10月29日 朝刊掲載
日本大学教授 望月由起氏(教育学)
【紙面本文】
小学校受験 家庭への効果は?
子どもは自信に 親は子育てが楽しく
小学校受験の関連本は志望者向けに書かれたものがほとんどだが、そんな中で一般読者向けの解説書が昨年出版された。
日本大学教授・望月由起氏(教育学)が、小学校受験を様々な角度からデータ化、分析、考察した『小学校受験~現代日本の「教育する家族」』(光文社新書)である。
受験シーズンの今、改めて本書に注目したい。
本書は、データやアンケートを基に、誰が、なぜ、どのように小学校受験をしているのか、受験後の子どもや家族にどのような影響があるのかなどを分析した内容だ。
様々ある切り口の中から今回は、小学校受験を志望する家庭向けのアンケートに基づき、受験家庭の傾向を明らかにしている箇所を紹介したい。
質問に対し、受験家庭の80%以上が「そう思う」と回答し、傾向が良く表れた項目に焦点をあててゆく。
まず「小学校受験の子どもへの影響」に関する質問だが「子どもの日常生活が充実する」(80%)「子どもの自信につながる」(87%)と高い割合が出ている。
著者はこうして、受験家庭では小学校受験が受験児の自信につながるという認識を強く持っていることを指摘する。
また「家族や親への影響」に関する質問では「子どもを持つことで自分自身も成長したと感じる」(95%)「子どもの成長に満足している」(93%)「子育てが楽しい」(89%)「家族の結びつきを強くする」(86%)などで高く、受験家庭が子育てに対し、ポジティブな感情で臨んでいることを示す。
続いて「子どもの教育環境」に関する質問では「子どもの進路は、親が責任を持って考えるべき」(84%)「子どもの教育には多少無理をしてでもお金をかけたい」(83%)での割合が高く、同じ質問を小学校受験をしない家庭にした割合と比べた場合、そのひらきが特に大きいと指摘する。
一方で「子どもに対し感情的に叱ってしまうか」の質問では、受験家庭より受験をしない家庭の方が「そう思う」と答える割合が高く、抱かれやすいイメージと現実では異なると分析する。
本書はこうした小学校受験の実像をデータから客観的に理解できる一冊となっている。