神奈川新聞 連載コラム

23回 ステップアップ!(幼児教育編)幼稚園、保育園の教育は?

  • 2013.10.21

神奈川新聞2013年10月21日 朝刊掲載

今週のポイント

  • 幼稚園(保育園)の教育内容は健康、人間関係、言語、環境、表現の5領域
  • 健康領域は、友達との元気な外遊びと、基本的生活習慣が身に付いているか
  • 料理は集中力、注意力を養い、自立心を向上させる

小・中学校の義務教育では、教科学習が核となる。成績が付くので、関心度が高い。成績表に“怒り心頭”を経験された人も多いだろう。特に、高校入試は、中学校の成績=内申点の影響が大きいので、注目度は高い。よって、家族が神経質になるのは理解できる。
ところで、小・中学の評価項目は周知されているが、幼児教育はどうなっているのか。世間的には関心度が低い。幼稚園は「学校教育法」で定められた学校ではあるが、小・中とは異なる。連携する小学校へは、「指導要録」「保育要録」として、生活の様子などの“申送り”がある。
幼稚園(保育園)の教育内容は、【健康】【人間関係】【言語】【環境】【表現】の5領域。一見、うん?という感じだが、これがなかなかの優れもの。ただ、能力開発という視点では書かれていない。よって、そこをカバーしたい。
今回は【健康】。この領域は、友達と元気に外遊びができるか、と基本的生活習慣(衣服の着脱、食事、排泄)が身に付いているかどうか、とに集約される。

5領域の中の「健康」領域のねらい(幼稚園幼児指導要録と保育所児童保育要録のねらいは同じ)

明るくのびのびと行動し、充実感を味わう
自分の身体を十分に動かし、進んで運動しようとする
健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身につける

今月からNHKの朝ドラが「ごちそうさま」になった。食事の場面や仕込みのシーンが頻繁に出てくる。主人公がおいしそうに食べる。“食”は生き物としての原動力だ。“食”で家庭内のしつけ、ルール、文化が培われる。医食同源の言葉もあるように、健康の源。能力開発にこれを活用しない手はない。
まず前提条件として“食”を楽しむ、好きにさせることだ。何でも食べられる子は特別だと考えたほうがいい。苦手なものは誰でもある。矯正させたい気持ちは分かるが、悠揚に構える方が得策だ。義務感で食べる食事ほど嫌なものはない。会話と笑顔があればごちそうになる。
次に、食材、調味料、道具などに興味を持たせたい。スーパーや商店街は、“教材の宝庫”だ。そこには新鮮な生きた題材がある。コツは、じっくり手に取ることだ。観察して、比較して、選択する。そのプロセスは見せたい。たまには、漁港に足を延ばすのもいい。海の幸を上手にさばく光景は、好奇心を刺激する。
究極は食事作り。能力開発の絶好な作業場となる。食材を洗う、切る、煮る、約、炒める。子どもに包丁や火を扱わせるには手間が掛かる。危険も伴う。だから、慎重になる。集中力も養える。料理は、自立心を向上させる。自分で作らなければ食にありつけない、こんな状況になれば、誰でもたくましくなる。