神奈川新聞 連載コラム

44回 ザ・チャレンジ!(幼児教育編)名門私立大付属小 合格のポイントは?

  • 2016.3.7

 せんせいといっしょにかみヒコーキとばし。とおくまでとぶようにふたりでかんが
えて、じゅうしんとバランスがだいじだよって、おしえてもらったの。(入試直後に理
英会で実施した本人への聞き取りより)
 創立150余年、陸の王者と称す名門私大の附属小。全国約300校の国立私立小の中
でも人気が高く、今年度は2,500人超の志願者が集まった。入試本番までの歳月、さま
ざまな課題をこなしてのチャレンジになるわけだが、学校側は「その子本来の姿を見た
いので特別な対策は必要ありません」というスタンスだ。4年前に横浜市内にも系列小
が開校し、私たちの教室にもたくさんの志願者(お子さん)が通われている。
 小学校入試ならではの「行動観察」や「表現課題」において、この学校はひときわ強
く自らの教育方針を打ち出しているように見える。小学部から大学卒業までの16年間、
受験勉強に煩わされることなくじっくりと人間形成をする時間がある。その恵まれた環
境を踏まえてか、受験生への視点は独特なものがある。これまでに合格したお子さんたち
を振り返ると、「型にはまった無難な子」よりも「何か1箇所でも光る”個性”を持った
子」の方が合格しやすいようだ。この学校にとって入試とは「将来輝く原石を発見する機
会」あるいは「有望な子をスカウトする場」なのかもしれない。
 私たちは教室に通われるご父母に、「お子さんの光るところを何か見つけてあげてく
ださい」「好きな分野をとことんほめて伸ばしていきましょう」と絶えず声をかけている。
 ある男の子の話。入試対策授業で仕上げた「作品」を授業後に教室スタッフに見せ、工
夫・苦労した点を熱弁するのが常だった。入試本番でもそれは変わらず、課題の作品を作
り終えた足で試験官の先生に近付き(試験内容としてはその必要はないのだが)、作品につ
いて熱弁したそうだ。ただ純粋に目の前の先生に「自信作」を見て欲しかったのだろう。
 ある女の子の話。人を笑わせるのが好き。入試本番での運動課題「決めポーズ」をどう
するかお兄ちゃんに相談。返答は「目立った方がいいんじゃない?」。当日披露したのはお
相撲さんの「どすこいポーズ」。堂々とした姿に試験官の先生方の笑いを誘ったらしい。
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 冒頭の子の紙ヒコーキは、最後には先生よりも遠くへ飛んだ。熱弁の男の子、どすこい
の女の子、3人ともこの春、陸の王者の小学部の門をくぐることになった。小学校入試に
はこんなチャレンジもある。