神奈川新聞 連載コラム

49回 ザ・チャレンジ!(小学校受験編)小学生の英語教育は有効か?

  • 2016.10.10

 小学生の英語学習はその先の英語学習にどの程度有効なのだろうか。県内新設の公立中高一貫校で、中3生の英検準2級合格率を9割まで高め、全国屈指の英語強化校に育て上げた元校長は言う。「文法面など教科的な部分では、小学生の英語学習経験はほぼ関係ありません。中学から英語を始めた子の方が理解が早い場合もあります。」ただ、こうも言う。「発音や会話などコミュニケーションの道具として英語を使いこなせているかどうかという点では、幼小期の英語体験のある子が勝ります。」
 それを聞いて思い浮かぶ小学校がある。「好きな相手に気持ちを伝えたい」という
モチベーションを重視して小学校低学年の英語教育に取り組んでいる学校だ。八景島や海の公園も近く、自然豊かな環境の関東学院六浦小学校。英語科の九里先生はこども園の英語指導も担当しているが、それは「英語の授業」というよりも、母親がわが子にことばを教えるようなもの。子どものことばや思いを受け止め、心をつなぐことを大切にしているそうだ。
 低学年の授業をのぞいてみる。教師があらかじめ用意した、たくさんの「素敵なもの」「楽しいもの」を児童に見せる。見た側ではそれを誰かに伝えたい気持ちが沸々とわき上がる。伝える「誰か」は宣教師の先生。ネイティブの英語教師でもある彼らは子どもたちに大人気らしい。
「これ先生知ってるかな?」「先生は何て言うかな?」「早く言いたい!」ここに英語を話す必然性が生まれ、伝わった喜びが実感される。これがさらに英語でのコミュニケーション意欲につながっていくのだ。
 また、同校では、敷地内に大学院までが隣接しているという環境を生かし、英語教育のスムーズな接続と指導連携が図られている。園児から高校生までが参加する「関東六浦英語フェスティバル」はその成果発表の一つだ。小学校内に留まらず、関東学院全体で可能な限り英語の学習環境を広げようとするこの取り組みが、数年後にどんな成果をもたらすかが楽しみだ。
(どんちゃか/理英会 中里 淳)