神奈川新聞 連載コラム

59回 ザ・チャレンジ!(小学校受験編)リーディングスキルテストとは?

  • 2017.12.4

国立情報学研究所 教授 新井紀子氏
神奈川新聞 2020年12月4日 朝刊掲載

リーディングスキルテスト(以下RST)という、教科書や新聞などの文書の意味や構造を読み取る力を測定するテストがある。
2016年4月から今年7月にかけて、中高生を中心に小学校6年生から社会人まで全国約2万4000人が受けた。

RSTは、国立情報学研究所の新井紀子教授を中心としたグループが研究開発した。
新井教授は2011年から始まった、人工知能を使い、東京大学の入試に挑戦する「東ロボくん」プロジェクトのディレクターだ。

11月に開催された「リーディングスキルフォーラム」でRSTの調査結果の報告が行われた。
新井教授は会場で次のように語った。
「意味を考えない人工知能が大学入試センター模試に挑戦し上位2割に入った。
この結果を受け、はたして今の中・高校生は入試問題や教科書をきちんと理解しているのか、またそれ以前に『読めて』いるのだろうかと疑問を持ち、調査を始めました」

RSTの特徴は、問題文が教科書の文章や新聞記事などから作成されていること。
そして問題文の中に正解が書かれていることだ。その文章さえきちんと読めれば、そのテーマに関して予備知識がなくても解けるようになっている。一例を紹介する。

■以下の文を読みなさい。
「仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。」

問.この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適切なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

オセアニアに広がっているのは(   )である
選択肢.①ヒンドゥー教 ②キリスト教 ③イスラム教 ④仏教

落ち着いて読めば間違いようがない。
正解は②のキリスト教である。
だが、正答率は中学生が62%、高校生でも72%だった。
3~4割もが解けなかった。
この調査結果は今後の学習支援法の研究に生かすそうだ。
このような研究調査が小学生にも広がってゆくのは時間の問題だろう。