神奈川新聞 連載コラム

78回 ザ・チャレンジ!(小学校編)ICTを使った立命館小の英語授業は?

  • 2020.1.7

立命館小学校 正頭英和(しょうとうひでかず)教諭
神奈川新聞 2020年1月7日 朝刊掲載

日本の私立小学校で唯一、米マイクロソフトから先進校の認定を受けているのが京都市にある立命館小学校です。
同校は2006年の開校当初から情報通信技術(ICT)を活用した授業に取り組んでいます。
また、海外5カ国の学校と交流を持ち、留学プログラムにも積極的です。
このような革新的でグローバルな姿勢がこの学校の特長です。

そんな立命館小学校の英語科教諭、正頭英和(しょうとうひでかず)先生が昨年、話題の人になりました。
教育界のノーベル賞と言われる「グローバル・ティーチャー賞」のトップ10 にノミネートされたからです。
世界150カ国、約3万人ものエントリーからのノミネートは、日本人の小学校教諭としては初となる栄誉です。
正頭先生は同校でICT教育部長も務め、日頃から小学生を相手にICTを駆使した英語の授業を行っています。
今回、その授業が評価されました。

授業はまず、地元京都の観光スポットに行って外国人へ英語でインタビューすることから始まります。
人気のある場所はどこなのか、聞き取り調査を児童自ら行うのです。
こうして集めた情報を元に仮想空間に建築物をつくる人気ゲームソフト「マインクラフト」で神社仏閣などの京都の町並みを再現します。
完成した町並みは海外にも発信し、さまざまな国の人たちから意見や感想を集めます。
それらの反響を基にさらに町並みを改善していきます。
そんなユニークな授業を行う正頭先生を取材しました。

「テクノロジーの良さは子どもの学習環境に違和感なく、自然に取り入れられるところです」と話す一方で「僕の授業の8割は実は音読などの地道な内容です」と正頭先生。
「語学はインプット、アウトプットに加え、音読などで文を脳に刻み込むインテイク(定着)が重要」とも。
「インプット、アウトプットはICTと連動しやすいけれども、インテイクは、やはり子ども自身の活動が重要です」と、音読指導の著書を持つ正頭先生の話は自身に満ちていました。

柔軟な発想の授業づくりは、確かな理論、豊富な経験があってこそだと取材して分かりました。