神奈川新聞 連載コラム

81回 ザ・チャレンジ!(小学校編)臨時休校が続き「学童保育」の苦労は?

  • 2020.4.27

神奈川新聞 2020年4月27日 朝刊掲載

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため全国で一斉の臨時休校が続く中、政府からの依頼を受け、感染予防に留意しながら児童の受け入れを続ける「学童保育」を取材しました。
在宅勤務が難しい共働き家庭などにとって学童保育は拠り所になっていますが、一方で先の見えない状況が続き、現場スタッフの負担感は増しています。

今回、公私立83小学校の学童保育運営を行う民間企業、理究キッズの仲山雄一朗氏に状況を聞きました。
一口に学童保育と言っても、自治体や学校ごとに「開所」の捉え方が異なり、苦労も現場ごとに違うそうです。

まず、理究キッズが委託を受ける小学校のうち、私立小学校と、鎌倉・横須賀の市立小学校では通常、児童の受け入れ開始は放課後からですが、臨時休校期間に入った3月2日以降は朝から受け入れを始め、夜7時まで10時間以上も開所しています。これは通常期の2倍に相当するとのこと。
学童保育のスタッフはその多くが地域の子どもたちのためになりたいという思いで勤める近隣の主婦層や高齢者です。感染予防に留意しながら、児童を預かる精神的負担に加え、体力的な負担が少なくありません。

この労働状況の変化について、仲山氏は「現場スタッフは意識が高く、使命感も非常に強いため、シフトを調整しながら朝からの受け入れ態勢を整えてくださっています」と、ねぎらいの言葉を述べていました。

他方、横浜市では市立小学校が「緊急受け入れ」を実施。朝から通常期の下校時刻までは学校の先生たちが留守家庭児童らを預かっています。
このため学童保育は放課後からの開所でよく、横浜市では臨時休校期間でも安定運営できているとのことです。

横浜市教育委員会と、こども青少年局が下したこの「緊急受け入れ」の決定に対し「現場の負担が軽減する、大変ありがたい措置」と仲山氏は謝意を表していました。 

 ただ、この「緊急受け入れ」措置に対し、施設管理者である学校長が時間短縮などの変則実施を希望するケースがあるそうです。
児童や教職員の感染防止と、留守家庭児童の受け入れとの狭間で揺れる責任者の苦悩を感じます。
しかし、これによって今度は学童保育が、市の方針と学校長の意向との間で板挟みになり、現場は当惑しているそうです。感染拡大防止の動きが学校の臨時休校を契機に教育現場にもさまざまな問題を引き起こしていることがわかりました。