神奈川新聞 連載コラム

57回 ザ・チャレンジ!(小学校編)子どもが生むアートとは?

  • 2017.9.4


 小田急線中央林間駅と南林間駅のちょうど中間に位置する聖セシリア小学校は、今年の春から在校児童向けにアフタースクール(学童保育)を開設した。
特徴の一つがアートプログラムだ。
指導員の荒井淳一さんは多摩美術大学出身。
専門学校で絵の指導経験もある。
たなばた、貝殻、風鈴、万華鏡などテーマは与えられるが、どう作るかは子どもたちの自由だ。
荒井さんの完成見本が提示されるが、あくまでも参考でしかない。
「やってはいけない、なんてことはないから、自分の思ったふうにやってみよう」と荒井さんはいつも子どもたちに声をかける。

 「こまごまと手順を説明したり、指導したりすることはほとんどありません。
自由な発想が大事なんです。
子どもは、何か一つヒントを投げかけるだけで、まったく違う作品が生まれてくる。
これもできる、あれもできるといったように、どんどん前向きな気持ちが子どもたちの中に湧き出てくるのです」とにこやかに語る。
「ふだんの授業時間にテストの答案用紙が渡されたときには、指示どおりに書かなければならないけれど、アートの時間は違います。
紙を一枚渡されたら、ひっくり返して何か描くのもよいし、破るのもよし。
破ってから何か描いてもよいのです。」と続ける荒井さんだが、作品の仕上げに話題が移ると、表情が厳しくなった。

 「子ども向けの工作教室がありますね、そこでは何でもセロテープでくっつけて、手早く簡単にできることが良いという風潮です。
でも、セロテープだらけの完成品はどうしてもきれいではない。
そういうものはやっぱり大事に取って置かれることはないでしょう。
思い出と同じように、作品には時間と記憶が閉じ込められています。
だから瞬間を大切にしたい。
自由には作らせるけれど、ぐちゃぐちゃなものは作らせたくない。
『ああこんなすごいものを作ったんだね』と、おうちに持って帰ったときに言われ、飾ってもらえるものを作らせてあげたい。
その部分にだけは注意してサポートしています。」と語っていた。