神奈川新聞 連載コラム

62回 ザ・チャレンジ!(小学校編)道徳教育 どう進める?

  • 2018.4.16

お茶の水女子大学附属小学校 教諭 片山守道氏
神奈川新聞 2018年4月16日 朝刊掲載

小学校でこの4月から道徳が正式な教科になった。
これに先駆けて、お茶の水女子大学附属小学校(東京都文京区)では、2015年に新教科「てつがく」を創設。
独自の道徳教育に取り組んでいる。同校の研究推進部長・片山守道教諭に話を聞いた。

■「てつがく」とは?
―児童が互いの考えを聞くことで刺激を受け、各自の考えを深める授業です。
対話することと考えを書き記すことを大切にしています。
対話のテーマは、例えば「生きるとはどういうこと?」「親友と友だちはどう違うの?」など。
当たり前で日頃あまり意識しないことについて考える時間です。

■「てつがく」に取り組むのはなぜ?
―お茶の水女子大学附属小学校の教育理念は「シチズンシップ教育」です。
その具現化が「てつがく」の授業です。
「シチズンシップ教育」とは、多様性を認め主体的に社会参加する市民を育成する教育です。

■「てつがく」の授業での教師の役割は?
―教師はこの授業では教える立場でなく、対話の進行役としての務めに重点があります。
子どもたちが何に引っかかり、どんな考えを持って対話を進めているのか察知し、授業展開の地図が描けるのが理想的です。
しかし、その場での状況判断は難しく、ポイントで適切な応じ方ができないこともあります。
全体把握を冷静に行い、対話が深まるような投げかけに留意しています。

小学5年生の授業を見学した。
クラスの全員が輪になって対話している。
対話のテーマは「おたがいが自由でいられる判断の基準」だ。
発言していた児童は地球儀を模したクッションボールを手にしている。
発言が終わると、手を挙げていた児童の一人に向けてそのボールをポーンと投げて渡した。
ボールを受け取った児童が次の発言を行うわけだ。
これを繰り返し、活発に意見が飛び交っていた。
「協力と思いやりは違うのでは?」
「妊婦さんに電車で席を譲ることは、出産に協力しているのかな?」
「他人と友だちでは思いやりに違いがない?」など。
板書係の児童が意見をてきぱきと整理分類し、書き出す姿にも目を奪われた。