神奈川新聞 連載コラム

72回 ザ・チャレンジ!(小学校編)「インクルーシブ教育」とは?

  • 2019.5.14

国立特別支援教育総合研究所 名誉所員 小林倫代氏
神奈川新聞2019年5月14日朝刊掲載

横浜市が行う学童保育事業「放課後キッズクラブ」。
その運営を市から委託されている民間企業・理究キッズが、常勤職員向け研修として講演会を開催しました。
目の前の子ども達への対応で日々忙しいスタッフですが、この日は専門家の講義に耳を傾け、教育に対する学術的理解を深めることができました。
講演者は国立特別支援教育総合研究所・名誉所員の小林倫代氏です=写真。以下は小林氏の講演内容です。

障がいのある者とない者が同じ場で学び、障がいのある者が、その能力を最大限度まで発達させて、社会に参加することを目指す仕組みを「インクルーシブ教育システム」と言います。
「インクルーシブ」とは「包括的、包み込む」という意味の英語です。
「多様な学びの場」をつながりを持って準備することで、障がいのある子ども一人ひとりに対し、きめ細かな指導や支援が行えます。

義務教育段階の子どもの数は減っているものの、特別支援教育対象の子どもの数の割合は増えているという調査結果もあり、共生社会に向け、特別支援教育の重要性は増しています。
子どもが急に部屋を出ていったり、突然暴力を振るったりする行動には、必ず原因があります。
どうして、子どもがその行動を取るのかと大人たちは思いをはせてほしいです。
そして、他の子どもたちに対しては自分とは違う特徴を持った子がいることを知ってもらい、『苦手なことってあるよね』と説明してあげてほしいです。

学童保育の特徴は異年齢で普段のクラスとは異なる人間関係があること、そして、学業とは異なる遊びと生活の場であることです。
これらの特徴を持つ学童とは子どもの成長を促すための実践の場所だととらえてください。
今ある環境の中で、どんな遊びや活動ならば、子どもどうしで楽しめるのかを追求してほしいのです。

障がいのあるなしに関係なく、全ての子どもが共に成長するというインクルーシブ教育の最前線に皆さんが立っているのです。
子どもたちの生活の自立を促す場をぜひ作っていってください」と語り掛けました。