理究の哲学(エンジン)

第七章 仕事ノ学

第一項 問題解決能力を磨く(1)

― 「データ・データ・データ」―

問題解決能力を磨く最初のステップは、事実・現実を把握する習性(習慣)をつけることです。事実は、主観ではなく客観的に示すことが大事。「すごく売れています」「なかなか入会しません」など感覚的な表現で報告されても、経営としては、次のステップにはいけません。よって、常にデータを求めます。このデータの集積や分析、そして考察する力をつけましょう。文系専攻の人は、理系の人に比べ、データに弱い人が目立ちます。臆病になる必要はありません。横軸と縦軸の関係が何を意味しているのか考えればいいのです。数式を解くようなことはありません。すべて慣れです。
「費用対効果」「労働対効果」は、必ず会社として求めます。
「利益」という、継続可能な組織の源泉は、株式会社には求められます。
社会福祉法人やNPOやボランティア集団のような“いいかげんな”(表現を変えて言えば、とてもユルユルな)数値管理はできません。

さて、総務部はどういう行動を取ったのでしょうか。
第1に、電話対応時間計測を始めました。
全メンバーによる、通話時間記録のデータ集積です。
1ケ月、3ケ月、半年、と計測は続き、どれだけ電話対応に時間を“搾取”されているかを可視化していったのです。“搾取”という言葉は、勿論スタッフが使ったわけではありません。
第2に、電話対応のマニュアルの整備です。
電話問い合わせで、頻繁に聞かれる事(つまり、時間が取られること)を分類し、それを絞り込んでいきました。理路整然と問題解決する知恵を集積していきました。
これらのデータ(年間あたりの電話対応時間、電話内容分類など)は、「まなび予約.com」開発の決断をスムーズにさせました。
IT時代に、“人海戦術を使うとは、時代遅れもはなはだしい、もっと効率のよい仕事をさせて欲しい”という声にならないスタッフの心の声に配慮は必要です。
開発は、2013年からはじめ、正味4ケ月で第一次ソフトが完成。
ITソフト会社との良好な関係も背中を押してくれたようです。
人は理屈や命令ではなく、知恵と熱意、そして人柄で動くのだなぁと感じました。

冒頭の田辺昇一氏の著書には、30年前に出会いました。経営を独学で勉強していた頃です。書店に立ち寄り、偶然手にした本。右も左も解らない中で『未見の出発』は、私の経営哲学に影響を与えてくれた書籍の中の1冊です。出会いとは本当に不思議です。
業績(成果)=意欲*能力は、心理学が教える原理です。実験室から生まれた原理で、まぁ、誰でも納得はします。ただ、現実の社会での仕事では、この2つの能力だけでは進まない、問題解決にブレーキがかかる、時には邪魔することがあります。
それが、人間関係。田辺氏はコンサルタント会社を経営していて痛感したそうです。そうです、人の心ばかりは、自分の思う通りにはなりません。そのことを自覚してこそ、社会人としてスタートです。

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