理究の哲学(エンジン)

第六章 保育・幼児教育の考察②③

第一項 幼児の能力分析 編

2【無償の愛は、知的能力発達に影響】(2012.05.14 掲載)

「ONE PIECE」という漫画がある。絶大な人気を誇っている。この漫画を題材にした本「ルフィの仲間力」(安田 雪)に、『仲間を信頼する大前提は、“無償の愛”を受けた経験があることだ』という一節がある。ふと、思った。“無償の愛”を受けない人はいない。少なくとも人間の赤ちゃんは、“無償の愛”なしでは生き延びられない。つまり、誰しも経験はあるのだ。しかし、悲しいかな、記憶する機能が育っていない。
前回は、「スキャモンの発育発達曲線」について触れた。復習しよう。これは成長発育を20歳の状態を100%として、各体組織の発育の特徴をグラフ化したものだ。今回は、①リンパ系型②神経系型の2つだけを比べてみよう。リンパ系型は特殊な曲線を描いていることがわかる。これには理由がある。思春期までに、病原微生物と戦う力をリンパ組織に学ばせる。人生を安全に生きていけるようにさせるからだ。「はしかには二度かかりなし」は、この仕組みによるらしい。
臓器は“重要なとき、必要なときに大きくなる”という発達原理がある。脳も同じ。グラフでわかるように3歳までに60%。6歳で90%の大きさになる。つまり、幼少期は、脳にとって重要な時なのだ。幼少期といっても乳児期(0歳~2歳)の脳と幼児期(3歳~6歳)の脳では違う。乳児期で最重要な脳領域は脳幹―基本的な生存機能として働く場所―だ。脳幹は、呼吸、心臓の調節、飲食、排泄、身体を動かすなどを司る。生き物としての能力を脳幹で発達させる。知性を担う大脳は、発達進行中で、脳幹より優先順位が低い。
例えば、記憶を司る“海馬”が完成するのは2~3歳といわれている。
つまり、乳幼児は海馬を必要とする記憶は苦手となる。
さて、子育て方針としては、先ず、生き物として一人前にすることを考えたい。シンプルでいい。当たり前すぎる事だが、実は、これが大変である。「温かい環境の中で心身ともに健康に」をキャッチフレーズに夫婦で協力すること。核家族が増えている昨今、父親の育児参加―イクメン―は必須だ。
ネズミの話で恐縮だが、親に毛づろいなど愛情を一身に受けたネズミの子は海馬がより豊かに成熟し記憶力のよいネズミに育つ、と科学雑誌での報告がある。人間も同じと考えていい。愛情豊かな環境が、人間としての心の核=基本的信頼感覚を形成する。そう、「無償の愛」と呼ぶものがそれを作る。さらに、知的能力にも大きな影響を与える、と考えれば、パパとママの行動原理も見えてくる。

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