理究の哲学(エンジン)

第二章 自分ノ学

第三項 育自 → 自分を育てる

高いつもりで低いのが教養
低いつもりで高いのが気位
厚いつもりで薄いのが人情
薄いつもりで厚いのが面皮
深いつもりで浅いのが知識
浅いつもりで深いのが欲望
強いつもりで弱いのが根性
弱いつもりで強いのが自我
多いつもりで少ないのが分別
少ないつもりで多いのが無駄

― 『つもりちがいの人生訓』 ―


第一項で、自己愛のない人間はいない、と書きました。
ただし、極端に自己愛が強かったり、自己評価が高いと日本の社会では人間関係が上手くいかないこともあります。バランス感覚が必要でしょう。
”自分に甘く他人に厳しい”私も含め、多くの人が持つ習性です。
それをユーモアたっぷりに戒めてくれるのが冒頭で紹介した『つもりちがいの人生訓』です。

さて、私たちの職場は、「保育・教育サービス業」に分類されます。
日々、人を育てる、指導する、を核とした運営をしています。先生と呼ばれることが多く、やり甲斐のある職種だと思っています。有難い事に、お金を頂いた上に感謝されるわけです。ただ、”先生と呼ばれるバカはいない”なんて陰口を叩かれるのが先生です。自己研鑽を止めてはならない職業の1つです。

私は常々、複数の先生が、同じ生徒達を1年間だけでなく、何年も見守る、指導する、歩みを共にする、そんな教育機関こそ理想と考えています。なぜならば、単純に、時間の量だけ”絆”が深まるチャンスは多くなり、関係性が濃くなるからです。大人(先輩)は、一人では偏ります。できれば、男女がいい。関係性が深くなれば、相互に豊かになる可能性は高まります。
私も何人の教え子達と、未だに付き合いをしています。雑談の中で、若者の考え方や感じ方を学んでいます。彼らも私を、父親や親族ではなく、人生の先輩として、一人の社会人として見ます。たとえ家族を持っていても、会えば、当時の小学生、中学生、高校生、大学生と先生(私)の関係になれます。そして、その関係性が固定化したものではなく、変化・発展していくのです。
”信頼性”(相互に無条件に受け入れる。利害関係を超越した絆のようなもの)が根っこのところで繋がっているからかなぁ、とも感じます。
いつでも昔話には心を和ませますが、政治や経済そして健康や教育、家族関係のこと、将来のことなど忌憚無く話すことができるので、これは有難く、面白い関係です。

A 先生 → (愛する・育てる・指導する) →(成長する)生徒
B 生徒 → (生きた題材を学ぶ・期待される) →(成長する)先生

世間一般の見識では、私たちは指導者で、子どもたちを”育てる”側に位置づけされます。先生 ⇔ 生徒の関係でいえば、A:先生 → 生徒のイメージです。この→の意味は”影響、伝播”と考えてください。
表面的にはこの図式は正しいのですが、現実的には、これだけでは不足しています。つまり、B:生徒 → 先生もあります。見えないフィードバックで、先生もまた成長するからです。医療の世界でも、「患者からの事例で、病気に対する考え方や診断の方法が進化する」のですから、保育現場や教育現場でも同じようなことが考えられます。
たとえば生徒が、小学5年生から中学3年生になったら、5年間が経過したことになり、その生徒はすでに11歳ではなく、15歳。思春期に突入しています。さて、面倒を見始めた時の先生(あなた)は、35歳としましょう。
時間は誰にも平等に与えられますから、あなたは40歳になっています。
この5年間で、あなたの内面は変化している可能性があります。
この5年間で、あなたは指導者として成長する可能性があります。
生徒たちに、あなたが成長している姿を見せられる可能性があります。
生徒たちに、「キミたちの目標は何ですか。志望校はどこですか。将来どうしたいですか?」と尋ねます。
私はあなたに尋ねます。
「あなたの今年の目標はなんですか」と。
自分を育てる方法や手段を見つけましょう。
自分も成長できる努力をしてほしい、というか
その方が楽しい人生を歩めるのだと私は考えています。

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