理究の哲学(エンジン)

プロローグ

自分を知る

人間社会は、中世→近世→近代→現代と、常に「哲学」という学問を発展させてきました。
難しい用語や事象に触れるつもりはありません。
あなたが一番関心のあること、それは「自分」ではありませんか。

多くの人は、自分自身に一番関心があるでしょう。

私は、どういうタイプの人間なのか
私が、もっと成長するためには何をしたらよいのか
私は、どうしてこんな感情をもつのか
私が、仲間たちと上手くやっていくためにはどうしたらよいのか
私が、ストレスから解放されるためにはどうしたらよいのか

自分に一番関心はあるものの、一人では生きていません。
家族、近隣、友人、職場など人間関係の中で生きています。
あなたを取り巻く様々な“関係”の例を列挙してみましょう。

自分⇔自分  人間⇔人間
自分⇔他人  人間⇔自然
自分⇔家族  人間⇔世界
自分⇔国家  人間⇔宇宙

『なぜ、門限があるの?私の自由でしょ?これっておかしくない?』
『なぜ、こんな校則があるんだ?もっと自由にさせてくれよ』
『なぜ、母は弟に甘くて、姉である私にはきつく当たるの?』
と不自由さは親の命令や教師の権威に対して悶々とした中・高校生時代はなかったでしょうか。
「自由」や「理不尽さ」に対して、何かを感じ、悩み、考えた経験のある人は多いでしょう。

人間は、この世に誕生し、親(親代行)の庇護の元で成長していきます。
健康問題やいじめ問題がなければ、幼児、児童(10歳前後)あたりまで、スムーズに生きていくでしょう。

通常、児童後期から中学生ぐらいから変化が表れます。
特に身体的変化・成熟が、“自分”と向き合わせるキッカケになることが多いようです。
そのことが、自分を取り巻く環境(親、兄弟、友達、先輩、後輩、先生)との関係性に疑問や抵抗などの感覚を生んでくることもあるようです。

そう、そこで青年は、自然に“哲学”をするようになるのです。
2015年(上期4月~9月)NHKの朝ドラは【希(まれ)】でした。このドラマは、石川県能登と横浜を舞台に、主役の希とその家族や仲間の成長を描いた人間ドラマです。主人公・津村希は、幼い頃から父親が大きな夢を追いかけて失敗していく様を見て、「人生というのはコツコツ一歩一歩」という人生観・価値観を形成していきます。
希は、小さい頃からケーキ作りが大好きで、パティシエになる“夢”もありました。しかし「地道が一番」という公式に従い、夢は夢として横に置き、高校を卒業して地元の役場に就職します。しかし、ふとしたキッカケで、「コツコツ人生観」が揺らぎます。
自分の“夢”に挑戦すべきかどうか悩んでいくのです。自分の人生はどうあるべきなのか。自分は好きなことを捨ててよいのか。家族を説得するにはどうしたらよいのか。夢を実現させるための手順をどう考えるのか・・・・・・・・・・・・・・・。
そう、希(まれ)もまた、哲学したのです。

“なぜ? なぜ? なぜ?”という疑問の嵐に巻き込まれることもあります。
ただし、人生経験が浅く、知識もない、それゆえその出来事を理解・解釈する言葉を持たない、つまり“わからない”ために悶々としたりすることもあります。
だから、時には感情的に反応することしかできず、大人からすると扱いにくい存在になっていくこともあります。
「挨拶する」ことすら、ギクシャクする青年もいるのです。
“権威”に対して、無意味に反発したくなる衝動に駆られるときもあるのです。
尾崎豊の「♪15の夜」や「♪卒業」などが青年たちに熱狂的な支持を受けたのも頷けます。感情の浮き沈みが激しく、表現方法の術を持ちません。
特にやっかいなのは、“性”。その性にうまく対応できず“病む”青年もいます。暗黒の世界に突入するのです。暗闇の中では、すべての感覚が研ぎ澄まされていきます。人生の“敏感期”なのです。
だから、哲学をするようになるのです。
そう、感じ、悩み、考えることをするのです。勿論、修行のように苦しいのですべてをシャットアウトする術を身につける青年もいます。

この本を理究の哲学(エンジン)と名付けました。
大上段に哲学(てつがく)というのは憚られるかなという気持ちと、考えることが結局、私たちを前進させるエネルギーの元になるということで、まさにこれってブルルン、ブルルンと音を立てる“エンジン”そのモノだなぁ、と勝手な思い込みで決めました。

蛇足ですが、さらにエンジン=円陣の掛詞。
円陣は、チームで作戦伝達し、修正、再構築、確認などを繰り返し、意思統一するときなどにする陣形です。
利点は、一人ひとりの表情を見ながら話すことができる陣形です。
保育施設運営、教室運営、教材制作は、チームプレイが基本。
会社組織の隅々まで、チームで動きます。

お客様に対しては、正社員も専任講師や事務スタッフ、学生アルバイトもチームの一員として接します。会社から何らかの報酬を得ている人(たとえ1円でも)は、好むと好まざるとに関わらず、“看板”を背負うことになります。ここでいう“看板”とは責任です。責任がない仕事はありません。
チームリーダーは、その“責任”の負担感をできるだけ軽減できるよう工夫をしてください。その“責任”を達成感や充実感に転化できるよう考え、行動して欲しいのです。ときどき円陣を組み仲間たちを苦楽を共有しましょう。

私は、創業から“心通う、仲間の表情や視線などを感知しながら働く環境”を大切にしたい、と考えてきました。今回、この本を執筆するに当たり、初めに“エンジン”という言葉の響きと意味を感じ、決めました。
第一章から第七章まであります。専門用語はできるだけ避けたつもりです。どの章から読んでも基本的に大丈夫です。第五章と第六章は、神奈川新聞に掲載したコラムを少しアレンジし、テーマごとに並べ替えました。

理究の哲学(エンジン)では、子育て・保育・教育に携わるスタッフのために、“考える手がかり”として、最新の脳科学や心理学の見識を紹介しました。人間の生態や特徴などを学び続ける事は、“保育・教育サービス業”に従事する私たちの責務であり、それが喜びや充実感につながるのだ、と確信しています。

理究グループ代表 米田 正人

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