理究の哲学(エンジン)

第一章 幸福ノ学

第六項 楽観脳(サニーブレイン)と悲観脳(レイニーブレイン)

脳の中には思考をつかさどる新しい領域と、原始的な感情をつかさどる古い領域があり、両者は神経繊維の束で結ばれている。この結びつきが、さまざまな心の動きを生む。
ネガティブな心の動きとポジティブな心の動きは、それぞれ別の回路が担当しており、前者の回路を「レイニーブレイン(悲観脳)」、後者を「サニーブレイン(楽観脳)」と、この本では呼ぶことにしよう。

― 『脳科学は人格を変えられるか』エレーヌ・フォックス ―


楽観と悲観は、他の性格と同じように「気質」と「一時的な状態」に分けて考えられます。人間には感情があり、場面場面で、そのときの状況で、そのときの心境で、強気になったり弱気になったり「一時的な状態」は誰にでもあります。
「気質や性格」として楽観的な人は、陽気で明るいので、周りの人たちを和ませたり、安心させたりします。チームには欠かせない存在です。ほら、あなたの周りにもいませんか。
一方、悲観的な「気質や性格」の人も、いつも不安や後向きな考えに取り付かれているわけではありません。楽観的な「気質や性格」の人より慎重であったり、熟慮する傾向が強いのです。それゆえ、未来に対して不安や懸念を持ち、何か落とし穴はないか、これで大丈夫なのかと、絶えず気を揉むのです。
心理学的には”不安傾向が強い”という表現をします。
勿論彼らにだって、当たり前ですが幸福感を味わうこともあれば、将来に希望を持つことはあります。ただし、悲観的「気質や性格」の人は、どちらかをいうとリスクを冒すより、安全な道を選ぶ傾向が強いのです。よって、否定的な言動や行動面だけ強調し、レッテルを貼り、疎んじるのは組織として得策ではありません。チーム内でのギクシャクは、全体のポテンシャルを下げてしまいます。私は、慎重に考えるタイプも必要だと考えています。

冒頭で触れたエレーヌ・フォックスは、「人間が生きる上で、健康的で敏感なサニーブレイン(楽観脳)を持つことは大事だが、健康的で敏感なレイニーブレイン(悲観脳)を持つことも重要だ」と述べています。
確かに人生において、失望、落胆、悲しみ、失敗、から完全に逃れられる人はいないでしょう。さまざまな感情を経験し、その感情に対応し、時にはその感情を抑制し、コントロールする能力を養うことは、人生を乗り越えるために不可欠です。
日本の諺にも「可愛い子には旅をさせろ」や「獅子の子落とし」があります。いろいろな経験を経て、楽観脳も悲観脳も鍛えられるでしょう。
「人生、山あり、谷あり」とは、先人たちの経験。山(絶好調)で有頂天になるなよ、谷(スランプ)で落胆ばかりするなよ、という教えです。
さらに、「人生上り坂もあれば、下り坂もある・・・そして中坂の坂がある」と、言葉遊びのような、人生の機微を一言で表す表現が、よく引き合いに出されます。そうです、順境に進んでいるときは何も心配はいりません。問題なのは、”まさか”思いもよらない逆境に突如出くわした時に、どう反応するかです。災いを被ったときでも折れない心と前に進み続ける原動力が、サニーブレイン(楽観脳)の思考スタイルです。

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