理究の言魂(ことだま)

NO4-4 【プラス 賢】

「人間は感情の動物」
感情に支配され、振り回されたりします。しかし、その感情が大きなエネルギーを生むことも確か。よって、感情を軽視することは愚かです。
「感情の輪=円環モデル」で示されている“信頼感情”と“嫌気感情”は正反対の位置関係で交じり合うことはありません。普通“嫌いな人”を信頼しませんよね。

さて、このモットーの肝・核心は、“プラス賢”です。
これは、学歴や学力のことをいっているのではありません。なぜなら、受験で問われる能力と、“世の中で上手くやっていく能力”とは明らかに異なるからです。

たとえば、「覚えて再現する」能力が高い人は、高学歴・高学力を獲得する可能性は高いでしょう。学生時代はそれで充分通用します。社会人としては、それだけでは物足りません。なぜならば、社会生活では「正解のない課題」のオンパレードであり、感情が蠢(うごめ)く人間社会です。そこにはある種の力学が発生します。初めての課題に対して、または解決策が見当たらない事象に対して、何とか出口を見つける、折り合いをつける能力が求められます。どちらかというと“サバイバル”する能力。学歴に必要な能力との相関は、それほど高くないだろうと感じます。

私たちの仕事は、1人ひとり個性を持った子ども達を保育したり、一緒に生活したり、教育したり、学習させたり、受験指導したりするものです。また、親御さんとの意思疎通が仕事上での重要な要素となります。仲間・同僚とのコラボレーションで仕事が進みます。独善的な判断や配慮に欠ける行動では上手く事が進まないことも多いでしょう。初めから用意された解答は稀有です。

学歴の最高峰を卒業し、官僚のトップ(事務次官)まで上り詰めたエリートがパワハラやセクハラ、横領などで、人生を転落する、そんな話題がマスコミを騒がせます。彼らは明らかに“賢く”ありません。状況判断力が退化、欠如したのでしょうか。「勝って兜の緒を締めよ」という戒めの言葉が耳に入らない、“愚人”になってしまいました。とても残念な事です。
品性のある賢さ、倫理観のある賢さ、柔軟に対応できる賢さこそ、求めていきたいのです。とすれば「プラス 賢」は、
●コミュニケーション能力
●すぐに諦めない粘り強さ
●失敗しても立ち直る復元力
●コツコツ継続できる持続力
●誰とでも仲良くなれる親和力
●多少のことで弱音を吐かない精神力
●相手の気持ちを察する共感力・・・・・・

これらは“非認知的能力”と呼ばれている能力です。
これこそがプラス賢なのです。

感情の構造について触れてきました。
サバイバルに必要な感情のメカニズム
よりよい生活をするための感情のメカニズム
混沌とした世界が感情の世界です。取り扱いは、難しい。
感情に鈍感では仕事人になれません。感情に敏感すぎても生きづらい。

夏目漱石の『草枕』の冒頭の名文
に働けば角が立つ、にさおさせば流される。地を通せば窮屈だ。とかくこの世は住みにくい・・・」

哲学者のカントが、人間の精神の働きとして「知・情・意」の3つを考えました。漱石は、それを小説の中で、日本風土に合わせた“智・情・意”を見事に表現しました。
「情にさおさせば流される・・・」感情は、私たち人間にとって巨大なパズルであり、迷路。人生を「賢く」生きるための方略の1つに、自分の感情や他人の感情をザックリと知ることです。
そして、ミスや失敗をした時に「自分を許し」、「相手も許す」ことができる“ゆとり”“寛大さ”が上記の“非認知的能力”の基盤になっているように思えます。その能力が、「賢」に繋がるのです。

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