理究の言魂(ことだま)

論語と算盤

NO2-2 社是 Aufheben=止揚」の章で渋沢栄一に触れました。2021年のNHK大河ドラマの主人公です。2019年4月に新・1万円札(2024年から)の図柄に決定した時から、静かな渋沢栄一ブームが起き、放映される2021年2月中旬からは、さらに加速化します。猫も杓子も「論語と算盤」を口にすることでしょう。江戸時代に生まれ昭和初期まで生き、日本の資本主義の父と言われた人物が脚光を浴び、正当に評価されることは素晴らしいことです。

大河ドラマ「青天を衝け」|NHK

渋沢が生まれた江戸時代は「士・農・工・商」という身分制度で統治され、商売(金を稼ぐ行為)は卑しいという価値観で支配されました。農家出身の渋沢は、幕末から明治初期の激動期に成長し、価値観が崩壊する時代経験を通じて「利益追求と道徳の調和(バランス)」を説きました。それが「道徳経済合一」(どうとくけいざいごういつ)という考え方。簡略にいえば、事業をする上で、常に社会貢献や多勢の幸せ実現といった公益を追求しながら、同時に利益を上げていくという理念です。
渋沢は、武士のような精神が必要であると、自立を説きました。ただし、“武士は食わねど高楊枝”のように経済を重んじなければ、世界に追いつくことはできないことを主張したのです。だから、“士魂”と“商才”を併せ持つことが肝要であると。それが、有名な「士魂商才」という四字熟語
NHK大河ドラマ「青天を衝く」で、渋沢栄一をどう描き、明治時代の革命期、大混乱期、日本の成長をどのように演出するのか、今から楽しみにしています。前作の「麒麟がくる」もかなりの秀作。特に最終回の「本能寺の変」は、日本史上、悪役だった明智光秀の印象を変えた演出と演技。『う~ん、そうきたか』
大河ドラマは、日本文化が生んだ最高傑作の1つ。これを見逃す手はない(笑)

「お金」は、命の次に大事なものの1つです。「お金」の魅力は強烈です。よって、人を惑わせます。人を虜にもします。「お金」で人生が狂う、命を落とす人もいます。「稼いでなんぼ」「儲けたもん勝ち」のような価値観を蔓延させます。日本もバブルを経験しました。「拝金主義」が横行し、人心が乱れました。
中小企業の勝負の分岐点は、キャッシュ=お金の過不足です。「お金」は、人間で言えば血液。血液が不足すれば、それは死を意味します。大企業でも基本は同じですが、大企業であればあるほど、政府やグループ会社のヘルプが得られやすい。JALや東芝など日本を代表する大企業は、苦境になった時、日本政府や金融機関が助けます(その可能性が高い)。なぜならば、倒産した場合の影響が大きすぎるからです。
しかし、日本の企業の99%である中小企業は、自分の力で切り開き、生き残るしかありません。普通の経営者は計画的な運営手法を採ります。それは、目隠しして車を運転する人はいないのと同じです。サバイバルした会社に対して「生命力の強さ」などと評価するのは曖昧な抽象論であり、結果論に過ぎません。なぜならば、時代の流れ、時の悪戯(いたずら)、運の女神の現れ方など、人知を超えた“偶然”のエネルギーは計り知れず、それが簡単に生死の分かれ目を作ります。

新型コロナ騒動が1年以上私たちの生活や仕事を激変させることを、誰が予想したでしょうか。まさに、一寸先は闇の世界。変化対応能力が問われる経営の道は、どこか“恋愛の成就の道”に似ているのです(笑)

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