理究の言魂(ことだま)

NO9-3 認知心理学的なアプローチ

私たちは朝起きてから夜寝るまで、さまざまな行動をします。トイレに行く、顔を洗う、歯を磨く、パジャマを脱いで洋服に着替える・・・など。習慣化されている行動は、普通は無意識。ほぼ何も考えずに行動しています。
ただ、大切なデートや重要な会議などがある場合は、どんな洋服にしようか、ランチはどこで何にしようか、今日の議事予定のポイントは何か、議題のゴール目安は?など、何らかの情報を収集して判断-「意思決定」をしていきます。
瞬間的にサッと判断し、決める場合もあれば、熟慮を重ねたにもかかわらず、迷い、悩んだ挙句、決められないなんて経験はありませんか。「意思決定」➡「行動」には、摩訶不思議なルート、不合理な要素が満載です。

心理学者のダニエル・カーネマン は「あなたの意思がどのように決まるのか?」という研究を通じ、行動経済学という分野に貢献しました。心理学者にしてノーベル経済学賞を受賞したことで話題になりました。
彼の著書「ファスト&スロー 上下」によると、人間の思考や行動は、直感的で感情に基づく「速い思考=システム1」と、合理的で努力しようとする「遅い思考=システム2」の相互作用である、というものです。
二つの思考の特徴を分析し、人がいかに錯覚に陥りやすく不合理な決定を行うかを、さまざまな実験やテストを通して浮き彫りにしています。

次の表は、システム1=ファストとシステム2=スローの特徴です。理想は、システム2>システム1ですが、現実は、システム1>システム2で動いています。それはなぜでしょうか。あなたの“何かを決める”時を想像するとわかります。

ファストな思考=システム1

・自動的、努力不要
・高速思考、瞬間思考
①3×3=?
②顔の表情、声のトーンで感情を察する
③だまされやすく、信じたがるバイアス
④直感的、感覚的

スローな思考=システム2

・意識的、努力が必要
・使うと脳が疲労する
①17×24=?
②たとえば「バットとボールで合計1100円。バットがボールより1000円高い。では、ボールはいくら?」というような問題
③論理的、統計的、複雑

「朝食は何にしようか」「靴下を右からはこうか、左からはこうか」・・・などいちいち考えませんよね。日常生活は自動的に瞬間的に“意思決定”をします。システム1を駆使するのです。そのほうが脳が疲れないからです。つまり省エネってことです。人間はサバイバルするためにパワーを保存するように進化しています。
システム1は、働き者で、しかもそそっかしい(笑)。因果関係でバシバシ動きます。だから、間違いを起こしやすいのです。システム2は怠け者ですが、合理的に判断します。が、努力が必要で、複雑です。

このNO9は「行動原則」です。人は、行動する前に情報収集し、判断、意思決定をします。「意思決定」が合理的な判断だと考えて行動しますが、判断エラーに陥る様々なパターン「バイアス(偏り)」があることを証明しています。
たとえば、

・ 血液型類型を信じている人は、A型は几帳面、AB型は奇抜、O型はおおらか、などのステレオタイプで考えがちです。すると、A型なのにズボラな行動や、AB型なのに平凡な人、短気で怒りっぽいところがあるO型の行為などを無視したりします。そもそも人間を4分類することに無理があるのに、単純化して“当てはめ”をします。

・ 大企業に就職することこそが目標だと考えている人は、大企業のメリット情報だけが目に入り、デメリット情報は無視する傾向が強くなります。大企業のパワハラやリストラ問題は過小評価もしくは無視します。“この世に保証されたものはない”という真理は、今回の新型コロナ影響での航空業、運輸業、観光業の大打撃を見れば一目瞭然です。しかし、これすら歪曲します。

上記の例のように、自分が信じていることに対して都合の良い情報ばかりを集め、都合の悪い情報を無視する人間心理を「確証バイアス」といいます。
カーネマンの「ファスト&スロー 上下」は、プライベートや仕事上での判断や国民としての権利である投票行動など、よりよい決断や行動への道筋の役に立ちます。特に、商品開発、広報などマーケティング従事者や、人間の行動そのものに興味のある人には必読書といえます。ただ、実はそれほど簡単な本ではありません。上下で800ページほどあり、考えさせられる「設問」も多種多様。読破するのは時間を要します。まぁ、それが面白いといえば面白いのですが・・・。
YouTubeの解説動画や解説本もあるので、興味のある方はそこから入るといいでしょう。人間行動は、実はとても不思議で、面白いのです。
今回の「行動原則」は、そもそも“人間は不合理的な判断するぜ”を前提に、だから結構“いいかげんな人間行動”も起こりうる、と理解する事です。論理的に思える推論などが、実は個人的な思い込み、偏見、レアな経験から生じていることが多いのです。

あなたも他人も長所も短所もある。およそ“感情的な反応”はいい結果を生まないことは、あなたも経験済みではありませんか。「あんなふうに言わなければよかった」と反省したことは誰でもあります。そんな時は、システム2=スローを意識するといい。家族や仲間の失策やジャッジミス、欠点だけを見たら文句だらけになります。よって、“適当な人間行動を寛大に捉える方が賢明であり、窮屈でなく生きやすい”との思いをあなたに伝えます。その上で、少しでもより良い“保育・教育サービス”を提供していくために、身につけてほしい「行動原則1.2.3」を次項に掲げました(汗笑)

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